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脳神経外科学講座
TEL:03-3433-1111
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各疾患について
脳腫瘍
主な腫瘍疾患
 
概要・特色

当科では、脳腫瘍を専門とするスタッフにより良性・悪性に関わらず脳腫瘍全てを対象とし、 最新の知識と技術を持て治療を行っております。

スタッフ紹介

池内 聡(いけうち さとし)

1981年(昭和56年)東京慈恵会医科大学 卒業
東京慈恵会医科大学 脳神経外科 准教授
* 認定資格
日本脳神経外科学会認定医、日本脊髄外科学会認定医など
* 所属学会
日本脳神経外科学会、日本頭蓋底外科学会、日本脊髄外科学会など
* 専門領域
頭蓋底外科、脳動脈瘤の外科的治療

柳澤隆昭(やなぎさわ たかあき)
(画像準備中)
略歴:
1988年(昭和63) 東北大学医学部医学科卒業
1994年(平成6 年)東北大学大学院医学研究科博士課程(東北大学加齢医学研究所発達病態 研究分野・小児腫瘍科所属)修了、医学博士
1995年(平成7年)英国The Royal Marsden Hospital / The Institute of Cancer Research Department of Paediatric Oncology, Clinical Research Fellow (Lecturer status Universities of London)として勤務
1998年(平成10年)国立がんセンター小児科 チーフ・レジデント
1999年(平成11年)東京大学分子細胞生物学研究所 博士研究員(兼任)
2004年(平成16年)東京慈恵会医科大学 小児科学講座 講師
2007年(平成19年) Department of Pediatric Oncology (Brain Tumor Program), Hospital for Sick Children, Toronto, Visiting Professor
2007年(平成19年)埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 脳脊髄腫瘍科 小児脳脊髄腫瘍部門 部門長、埼玉医科大学脳神経外科 准教授
2014年(平成26年)東京慈恵会医科大学 脳神経外科学講座 教授
* 認定資格
日本小児科学会専門医、日本癌治療認定医機構認定医など
* 所属学会
日本小児血液・がん学会(評議員)、日本小児科学会、日本脳神経外科学会、日本脳腫瘍学会、日本眼腫瘍学会、日本小児神経外科学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本造血細胞移植学会, SIOP(International Society of Paediatric Oncology),EANO(European Association of Neuro-Oncology)など
*専門領域
小児神経腫瘍学(Paediatric Neuro-Oncology) 小児脳腫瘍, 小児脊髄腫瘍、網膜芽細胞腫に対する集学的治療法の開発

略歴:(省略なし)
1988年(昭和63) 東北大学医学部医学科卒業
1988年 山形市立病院済生館小児科研修医
1990年 東北大学大学院医学研究科博士課程入学(東北大学加齢医学研究所発達病態研究分野・小児腫瘍科所属)
1994年 同修了、医学博士
1994年 東北大学加齢医学研究所附属病院小児腫瘍科医員
1995年 英国The Royal Marsden Hospital / The Institute of Cancer Research, Department of Paediatric Oncology, Clinical Research Fellow (Lecturer status of Universities of London)
1998年 国立がんセンター小児科 チーフ・レジデント
1999年 東京大学分子細胞生物学研究所 博士研究員(兼任)
2000年 東京慈恵会医科大学小児科
2004年 東京慈恵会医科大学 小児科学講座 講師 
2007年1月 埼玉医科大学脳神経外科 助教授(小児脳腫瘍担当)
2007年2月 Dep of Pediatric Oncology (Brain Tumor Program), Hospital for Sick Children, Toronto, Visiting Professor
2007年4月 埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 脳脊髄腫瘍科 小児脳脊髄腫瘍部門 部門長 埼玉医科大学脳神経外科 准教授
2014年4月- 東京慈恵会医科大学 脳神経外科講座 教授 埼玉医科大学国際医療センター 脳脊髄腫瘍科客員教授

常喜 達裕(じょうき たつひろ)

1988年(昭和63年)東京慈恵会医科大学 卒業
1995年(平成7年)東京慈恵会医科大学大学院 卒業
1998年(平成10年)米国ハーバード大学脳神経外、Peter McL Black教授のもと2年間Childrens HospitalおよびBrigham & Women’s Hospitalにおいて脳腫瘍における局所療法に関する研究に従事する。
2002年(平成14年)東京慈恵会医科大学 脳神経外科学講座 講師
2012年(平成24年)東京慈恵会医科大学 脳神経外科学講座 准教授
* 認定資格
日本脳神経外科学会認定医、日本頭痛学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構認定医、日本神経内視鏡学会技術認定医、港区在宅緩和ケア研究会理事など
* 所属学会
日本脳神経外科学会(評議員)、日本脳腫瘍学会、日本間脳下垂体学会、日本神経内視鏡学会、日本小児脳神経外科学会、日本鼻科学会、日本頭痛学会(評議員)、日本人間ドック学会、アメリカ脳神経外科学会(AANS)、アメリカ癌学会(AACR)など
* 専門領域
悪性脳腫瘍の手術・化学療法・局所療法、内視鏡手術における間脳・下垂体外科、   小児脳腫瘍外科
* 主要論文
・Cancer Res. 2000“Expression of cyclooxygenase 2(COX-2) in human glioma and in vitro inhibition by a specific COX-2 inhibitor, NS-398.” 
・Nat Biotechnol 2001 “Continuous release of endostatin from microencapsulated engineered cells for tumor therapy.” 
・Neurosurgery 2002“Assessment of alterations in gene expression in recurrent malignant glioma after radiotherapy using complementary deoxyribonucleic acid microarrays.” 
など

赤崎 安晴(あかさき やすはる)

< 1991年(平成3年)東京慈恵会医科大学 卒業
2001年(平成13年)医学博士号 取得
2002年(平成14年)米国Cedars-Sinai Medical
Centerにて博士後研究員として脳腫瘍治療に従事する。
2007年(平成19年)東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター悪性腫瘍治療研究部研究員を兼務
2011年(平成23年)東京慈恵会医科大学 脳神経外科学講座 講師
* 認定資格
日本脳神経外科学会認定医、日本がん治療認定医機構認定医など
* 所属学会
  日本脳神経外科学会正会員、日本脳腫瘍学会正会員、日本癌学会正会員、   日本頭痛学会正会員など
* 専門領域
  悪性脳腫瘍の手術・化学療法・局所療法、内視鏡手術における間脳・下垂体外科、   小児脳腫瘍外科
* 主要論文
・J. Immunother 2001
“Antitumor effect of immunization with fusions of dendritic and glioma cells in a mouse brain tumor model.”
・J Biol Chem 2006
“A peroxisome proliferator-activated receptor-gamma agonist, troglitazone, facilitates caspase-8 and -9 activities by increasing the enzymatic activity of protein-tyrosine phosphatase-1B on human glioma cells.” など

郭 樟吾(かく しょうご)

2001年(平成13年)東京慈恵会医科大学卒業 医学博士
2008年〜2012年まで独立行政法人国立病院機構 横浜医療センターにて頭蓋底外科の世界的権威でもある藤津和彦医師のもとで聴神経腫瘍手術を中心とした多数の脳腫瘍の外科治療に従事する。
* 認定資格
脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本高気圧酸素管理医
* 所属学会
日本脳神経外科学会、日本頭蓋底腫瘍外科学会、日本脳腫瘍外科学会、脳神経外科手術と機器学会、日本脳神経血管内治療学会、日本脳卒中の外科学会など
* 専門領域
頭蓋底腫瘍(特に聴神経腫瘍)、脳血管障害全般
* 主要論文 
・Neurologia medico-chirurgica 2006 “Perisacral Gastrointestinal Stromal Tumor With Intracranial Metastasis”
・医療 2010年 当施設における脳神経外科手術教育と技術継承
  -脳べらを用いないtwosome cross-arm操作による顕微鏡手術-
・Journal of Neurological Surgery-PartB 2013“Drainage pathway of the petrosal vein evaluated by CT venography in petroclival meningioma surgery” 
など

森 良介

2003年(平成15年)東京慈恵会医科大学 卒業
2012年(平成24年)イタリアUniversita Degli Studi di Napoli FedericoU、Paolo Cappabianca教授のもと内視鏡下頭蓋底手術習得のため1年間留学 脳腫瘍一般の開頭手術,内視鏡手術に従事
2014年より血管内治療部fellowとしても従事中
* 認定資格
日本脳神経外科学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医、日本脳卒中学会専門医
* 所属学会
日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会、日本間脳下垂体学会、日本神経内視鏡学会、日本脳卒中学会
* 専門領域
内視鏡手術における間脳・下垂体外科、脳腫瘍の手術・化学療法・局所療法、脳血管内手術
* 主要論文
・Clinicopathological Features of Growth Hormone-Producing Pituitary Adenomas in 242 Acromegaly Patients: Classification according to Hormone Production and Cytokeratin Distribution. ISRN Endocrinol. 2013;2013:723432. ・Initial experience of real-time intraoperative C-arm computed-tomography-guided navigation surgery for pituitary tumors. World Neurosurg. 2013 Feb;79(2):319-26 など

最新設備紹介

最新式の多機能搭載手術顕微鏡(Carl Zeiss. Pentero)を含め、計3台の脳神経外科専用の手術顕微鏡を有しており、並列手術が可能となっています。また、特殊機能として術中(ICG)血管造影や、5-ALA(アミノレブリン酸)蛍光腫瘍撮影、3Dmultifusion(重畳画像)の導入、さらには全国に先駆けて導入したハイブリッドOR(手術室)にある術中ナビゲーションシステム、術中CT撮影によりリアルタイムに腫瘍摘出程度の把握や、正常組織の損傷を回避で常に安全・確実な脳腫瘍治療が可能となっています。

多機能搭載手術顕微鏡


透明感のある鮮明な手術画像は安全かつ確実に脳血管障害などの手術を行うには最も重要な要素です。顕微鏡の心臓部である光学系には、色収差がなく、色再現性の特に優れたアポクロマートシステムを採用した高い光学技術を有する手術用顕微鏡を(当施設は)採用しています。また顕微鏡を中心としたナビゲーションシステムなど周辺機器との有機的な統合、そして画期的な機能である「術中診断」を有している(当施設の)手術用顕微鏡は術中において総合的な診断を提供します。

術中(ICG)血管造影


特殊な光を当て、赤外線カメラを搭載することによって術中における血流観察の白黒画像表示を可能とした画期的な機能です。現在ではこの機能が脳血管障害の手術を行う上でゴールドスタンダードになりつつありますが、脳腫瘍手術においても重要な血管を視認する上で、重要なモニタリングとなっています。

<参考文献>
# 脳神経外科ジャーナル 2008年 郭 樟吾他
“術中Indocyanine green蛍光血管造影の有用性とピットフォール
工学的見地と臨床医学的見地からの考察”

# 埼玉新聞 “医学特集”(2009年5月掲載) 郭 樟吾
“脳動脈瘤手術の最先端 〜ICG蛍光血管造影〜”

# 第17回 脳神経外科手術と機器学会 シンポジウムにて発表  郭 樟吾他


特殊な青い光を術野に当てることにより腫瘍部が赤く光り、正常脳と腫瘍部を視覚的に識別することを実現した術中診断です。悪性腫瘍、特に神経膠腫を取り除くにあたって腫瘍部も然ることながらその境界域を見極めることが非常に困難でした。従来は肉眼観察や感触などの主観的な要素を頼りに切除を進めていましたが、当該機能を搭載することにより診断の一助として使用することが可能となった画期的な機能です。

3Dmultifusion


脳腫瘍により正常な構造物が圧迫・破壊されて、解剖学的な構築がしばしば失われています。すなわち腫瘍と神経・血管などの位置関係が術前に把握できていないと術後の合併症のリスクが高くなります。そのため当施設では、術前に特殊なコンピューター処理によって腫瘍と神経・血管・骨の関係を3次元化したシミュレーション画像を作成し、手術の戦略が詳細に立てられるようにしております。

<参考文献>
# インナーヴィジョン 2011年 9月号 郭 樟吾他  “頭蓋底外科手術における次世代型画像解析ソフトウェアを使った術前評価の有用性“
# 脳神経外科速報 2011年 郭 樟吾他  “頭蓋底外科手術における3D-multifusion imageを使った術前評価の有用性”
# CI研究 2011年 郭 樟吾他  “錐体斜台部髄膜種におけるCT-venographyを使った錐体静脈の還流評価”
# 第69回 脳神経外科学会学術総会にて発表 郭 樟吾他
# 第34回日本脳神経computed imaging学会にて発表 郭 樟吾他
# 第23回 日本頭蓋底外科学会にて発表 郭 樟吾他
# 第30回 Mt.Fuji Workshop on CVDにて発表 郭 樟吾他


当施設では、最新のナビゲーションシステム(これにより、手術中の位置情報が常にオンタイムで把握できるため重要な構造物を傷つける事無く、安全・確実な手術が可能となります)や、術中CT(これにより、オンタイムで腫瘍の摘出程度が把握できるので腫瘍の取り残しなどが避けられます)などを搭載したHybrid手術室を2室有しており、難解な脳腫瘍手術にその効果を発揮しています。この手術室は世界に先駆けて当院で最初に導入され、ここに配備されている手術支援機器から得られる精度の高い情報により、術者の技術・経験だけに頼らない安全・確実な手術が可能となり、良好な手術成績を収めています。

治療について

当科脳腫瘍チームでは脳腫瘍全般の治療を行っていますが、下記の疾患については、さらなる治療技術を有していますので御相談ください。
下垂体部腫瘍 頭蓋底腫瘍 聴神経腫瘍 悪性脳腫瘍 悪性神経膠腫(グリオーマ)に対する最新の免疫療法

<脳神経外科と耳鼻咽喉科コラボレーション手術>
ナビゲーション下経鼻内視鏡手術(低侵襲手術)
当科では、20年以上に渡り脳神経外科の下垂体腫瘍専門医と耳鼻咽喉科鼻内手術専門医が共同して手術を行ってまいりました。以前は顕微鏡で手術が行われておりましたが、近年は神経内視鏡手術が進歩し、ほとんどの症例で内視鏡を用いた治療が行われています。神経内視鏡を用いることで、安全な摘出が困難とされる上方や側方、頭蓋底の深くに進展した腫瘍でも、直視下で無理なく切除することが可能になりました。また、鼻内を丁寧に手術することで術後の感染症予防、嗅覚障害の減少につながっています。神経内視鏡を使用した手術では、手術翌日より食事が可能です。当科では、耳鼻咽喉科医師により毎日術後鼻腔内処置を行っております。


1. 2つの鼻孔から4本の手を入れる手術(2 holes 1 cavity method)  鼻中隔軟骨を一部摘出し鼻腔内を一つの空間として手術をします。この方法で手術を行うと術野が広くより安全な手術が可能です。この方法は学術論文にも報告し学会でも高い評価を得ております。


2. 鼻中隔粘膜を用いた鼻内修復 鼻中隔粘膜は血流が豊富であり手術で欠損した粘膜部分を覆うことで完全な鼻内修復が可能です。また、術後の髄液漏予防にも重要な役割を果たします。


<脳神経外科と内分泌内科のコラボレーション治療>
下垂体腫瘍の中には手術を必要とせず薬剤での治療が可能な疾患があります。これには、薬剤投与前にホルモン負荷試験をして的確に下垂体の機能を判断する必要があります。当院では、内分泌内科で負荷試験を行っております。

<難病指定される疾患です>
ホルモンを産生し他の臓器にも異常を及ぼす下垂体腫瘍は難病指定を受けられます。大事なことは、手術の前にホルモン負荷試験を行うことです。当科では、上記の通り内分泌内科で確実で安全な負荷試験を行っております。

頭蓋底とは脳を支える頭蓋骨の底の部分で、内側(脳側)からみた内頭蓋底と外側の外頭蓋底に区別されます。脳神経外科領域で扱う頭蓋底腫瘍は内頭蓋底に発生する腫瘍の総称です。また耳鼻科や眼科領域の腫瘍が頭蓋内に進展する場合もあります。内頭蓋底は、前から後ろにかけて前頭蓋窩・中頭蓋窩・後頭蓋窩に分けられています。それぞれ前頭葉、側頭葉、小脳および脳幹部が納まっています。
頭蓋底にできる腫瘍は脳の深部にあり、重要な脳神経や血管が密集しているために、治療が困難な場合もあります。そのため、大切な機能を温存することを第一に考えた治療を選択することが重要になります。

頭蓋底にできる腫瘍は様々ありますが、代表的な腫瘍としては髄膜腫、神経鞘腫などが上げられます。これらの腫瘍の多くは良性腫瘍であり、脳実質の外側に発生し増大とともに周囲の脳を圧迫するように発育します(髄外腫瘍と呼ばれます)。徐々に大きくなるため、症状が出た時には、腫瘍がかなり大きくなっていることがしばしばあります。腫瘍が大きくなると神経や血管を巻き込むように発育するため、良性腫瘍ではあっても機能予後が悪い場合が多く、早期発見と適切な治療が望まれます。
頭蓋底部腫瘍と診断された場合に重要なことは、治療の必要性の有無や時期、治療方法の選択、外科的治療の危険性・合併症などを十分検討することです。その上で、患者さんとご家族に十分な理解が得られるようにご説明し、治療方針を決定することだと考えます。

以下に、我々の施設での治療方針についてご説明致します。
1)治療が必要かどうか、経過観察でよいかを判断します
症状が軽微か、あるいは無症候性で大きさも小さい場合は、経過観察した上で治療方針を検討すれば十分です。経過中に増大傾向があれば治療をお勧めします。症候性の場合、脳への圧迫が強い場合などは外科的治療を考慮します。
2)治療が必要と判断された場合には、治療方針を検討します。
@腫瘍の発生部位と大きさ、A患者さんの年齢、B治療のリスクなどを総合的に判断して治療方針を決定します。
治療の選択肢としては
 *外科的治療(手術による摘出)
 *定位的放射線治療(ガンマーナイフ、サイバーナイフなど)
 *手術と定位的放射線治療の組み合わせ、があります。
多くの頭蓋底良性腫瘍は手術により全摘出できれば根治可能です。しかし、腫瘍が大きくなると重要な神経や血管を巻き込むように発育するため、術後に重篤な合併症を来す場合があります。その場合には、合併症を起こさないような範囲で摘出し、残存腫瘍に対しては定位的放射線治療を考慮します。
腫瘍が小さい場合にはガンマーナイフなどの定位的放射線治療が有効な場合も多く、他施設と連携して治療を行っています。
3)外科的治療に際しての工夫
腫瘍を安全に切除するための手術アプローチを検討します。頭蓋底腫瘍は脳の深部にあるため、腫瘍に到達する際には脳の圧迫を軽減し、重要な神経や血管への損傷を避けるための工夫が必要になります。最近では、頭蓋底外科の手術手技を用いた手術方法の発達により合併症や後遺症の少ない手術が可能となっています。
腫瘍摘出に際しては、様々な手術支援システムを用いて手術をより安全に行うことが可能です。3D画像処理による手術シミュレーション、ナビゲーションシステムの使用や電気生理学的なモニタリングによる安全な手術を心がけています。
4)頭蓋底再建・合併症の予防
頭蓋底部は顔面骨・眼窩・鼻腔副鼻腔と隣接しているため、感染や髄液漏などの術後合併症を防ぐことが重要です。そのため切除した頭蓋底部骨欠損や硬膜の再建が必要になりますが、症例に応じて形成外科や耳鼻咽喉科と連携して手術を行います。

以下に手術症例を提示します。

症例1

広範な脳浮腫を伴う左中頭蓋窩を中心とする髄膜腫です。前頭円蓋部にも小さな髄膜腫を認めました。腫瘍は左中大脳動脈を巻き込んで発育していたため、約90%の摘出にとどめました。病理診断は増殖能の強い異型性性髄膜腫であったため、残存腫瘍に対しては定位的放射線治療を行いました。入院時は意識レベルの低下、失語症、右不全麻痺を認めました。術後はリハビリテーションを行い、軽度の認知機能低下はありますが日常生活に支障はなく、経過観察中です。



症例2

左視力障害の精査で発見された鞍結節部髄膜腫です。腫瘍は左視神経を取り囲み視交差を上方へ圧迫するように発育していました。左視神経管内に進展していた腫瘍を含めて全摘出しました。左視力視野障害が高度であったため視機能の改善は得られませんでしたが、新たな後遺症無く退院されました。



症例3

脳幹部出血を繰りかえし、複視・左顔面神経麻痺・左感覚障害・両側の上下肢の筋力低下が進行性となったため、外科的治療を行った海綿状血管腫の患者さんです。顔面神経・運動誘発電位および聴性脳幹反応のモニタリングを行いながら、手術を行いました。第四脳室底より血腫腔に入り全摘出しました。術後は新たな神経障害の出現はなく、症状は改善傾向を示しリハビリテーションのため転院されました。

概要
聴神経腫瘍は前庭神経から発生する良性腫瘍で、難聴や耳鳴り,ふらつきなどの症状で見つかります(偶然無症状で見つかる場合もあります)。この腫瘍の発生部位の近くには顔面神経(顔面の筋肉と味覚の一部をコントロールしている神経です)と蝸牛神経(聴神経ともいいますが、聴力をコントロールしている神経です)が走行しており、ここが治療の最大のポイントになります。つまり、腫瘍を摘出する際にはこれらの神経を温存する必要があり、そのためには高い技術力と精密なモニタリング機器が欠かせません(神経を切断したり障害すると顔が曲がる、味がわからなくなる、聞こえが悪くなるなど患者さんの生活に直接結びつく障害を及ぼすからです)。

手術適応
(1)小型〜中等度:腫瘍の大きさが30mm以内もしくは脳幹を圧迫していない


(2)中等度〜大型:腫瘍の大きさが30mm以上もしくは脳幹を圧迫している


(1)に関しては基本的には経過観察をお勧めしていますが、定期的なフォローで大きくなってきた場合や、患者さんの不安感,希望などによっては外科治療(神経機能温存手術)もお勧めしています(体力的な要素も考えた上で放射線治療も選択肢の一つとして御相談をさせていただきます)。
(2)に関しては放射線治療が効きにくいため、原則的に外科治療(神経機能温存手術)をお勧めしています(術後に腫瘍が残存、再発ある場合には追加治療として放射線治療の御相談をさせていただきます)。

聴神経腫瘍は内耳道内に限局した小さなものから脳幹を圧迫して生命の危険に及ぶような大型の腫瘍まで様々ある中で、その手術の目的は腫瘍を最大限摘出し、神経機能障害を最小限に留める事がポイントとなります。そのため、当施設における基本的な手術適応は上記の通りですが、患者さん個々の家族背景や病気に対する不安感は様々なため、全ての患者さんにこの基準が当てはまる訳ではありません。患者さんが何を聞きたくて、どういった治療を望むのかを話し合いながら、各々の患者さんに合った“オーダーメイド治療”を行っていきます。

手術成績
 肉眼的全摘出・亜全摘出率(90%以上の摘出率):96.6%
 部分摘出率(90%以下の摘出率):3.4%
顔面神経温存率:93.4% 
*万が一顔面神経が切断された場合には、可及的速やかに形成外科に神経再生のための神経移植手術をお願いしています。
聴力温存率:55.1%
*郭ら(横浜医療センター;藤津和彦医師、厚木市立病院;石井卓也医師)の共同開発による特殊手術支援機器(蝸牛神経追跡モニター:詳細は後述の手術支援機器を御参照ください)により聴力温存率が飛躍的に向上しました。

手術支援機器
顔面神経刺激装置(NIM3.0)


顔面神経に直接微弱な電流を流す事により、顔面表情筋の収縮反応を音に変換する機器で、簡便に顔面神経の走行と機能を判定でき、顔面神経温存の手術には欠かせません。

蝸牛神経追跡モニター(Cochlear Nerve Tracer:CNT)


当たり前の事ですが、蝸牛神経(聴神経)がどこを走行しているのかをいち早く見つけられなければ聴力温存手術は不可能です。そこで、われわれは術者の“勘”だけに頼らず、正確に蝸牛神経を見つけるべく、独自に蝸牛神経追跡モニターを開発することに成功しました。この機器は、音刺激を受信したり、逆に刺激を出す事によって内耳から脳幹までの蝸牛神経の全走行における機能を測定できます。また、測定時間がわずか数秒なので手術操作を邪魔することなく簡単に行う事ができるため術中に蝸牛神経を見失う事がありません。さらには測定回数に制限は無く、体に無害なので安心して使えます。この機器を使ってから、聴力温存率 が飛躍的に向上しました(聴力温存率:55.1%)。また後述の聴性脳幹反応モニターを併用する事により、更なる精密な蝸牛神経の機能測定を可能としています。(術前より聴力が無い、もしくは極度に低下している患者さんには使えません。)

聴性脳幹反応モニター(ABR)
聴覚伝導路を頭皮上で脳波として導出する簡便かつ一般的な聴神経の機能を測定するモニタリングですが、その測定に数十秒かかるため、オンタイムの情報が得られないことが欠点です。(*その欠点を補うべく、われわれはCNTを併用しています)

この内容は、以下のごとく数々の学会発表を行っております
# 第23回,24回 日本頭蓋底外科学会にて発表 郭 樟吾他
# 第16回,17回 日本脳腫瘍の外科学会にて発表 郭 樟吾他
# 第6回 脳神経外科手術ビデオセミナーにて発表 郭 樟吾他
# 第21回 脳神経外科手術と機器学会にて発表 郭 樟吾他
# 第71回 脳神経外科学会学術総会にて発表 郭 樟吾他
# Joint Neurosurgical Convention 2013にて発表 郭 樟吾他

概要
悪性脳腫瘍の代表は神経膠腫(しんけいこうしゅ)といい、脳内にじわじわと浸潤するため境界が明瞭ではなく、特に悪性度の高い場合は手術のみで治療を完結することは非常に困難です。
また、脳腫瘍といっても150種類近く存在し、適切な治療を行うために診断の確定が重要なステップです。
そこで、我々は診断から治療まで集学的な治療を行えるように環境を以下の様に整えております。

診断
確定診断には腫瘍組織の病理検査が必要ですが、術前診断は手術適応や手術方針を決定するために必要であり、様々なモダリティーを駆使して診断補助としております。
さらに、当院では最新のMRI、CTを利用してMRS・トラクトグラフィーといった特殊撮影を施行しています。また脳血管撮影、提携している他施設でのPET検査などを駆使して診断に役立てています。

治療
治療は外科治療と後療法(外科治療の後に補助療法として行われる治療の事で、化学治療と放射線治療が主体となります)の2本柱で行われます。
悪性腫瘍の外科治療は直接脳に切り込む手術となるため、脳の機能を温存しつつ最大限の摘出率を実現することが求められます。そのため当院では、様々な手術支援装置を搭載したハイブリッド手術室で悪性腫瘍の手術を行っています。
手術支援として、術中CT撮影、画像でのナビゲーション、術中蛍光腫瘍撮影(5ALA)、各種神経モニタリング(MEP・SEPなど)、術中病理などを利用し、より安全に確実性の高い手術を実現しております。また、2013年4月より保険適応になった化学療法の徐放剤(ギリアデル)の使用や2013年7月より保険適用になったアバスチンの使用に加え当院独自に開発した最新の免疫治療も行い生存期間の延長を目指しています。
術後運動性麻痺や言語障害などが残っている場合には、リハビリテーション科と連携した言語・運動・作業のリハビリテーションを含めた他科連携による集学的な治療を展開しております。  

カルムスチン徐放剤(ギリアデル)治療



正常組織との境界が不明瞭な神経膠腫において、100%の摘出はほぼ不可能なため、術後の腫瘍再発制御が重要な課題です。
全身投与の化学療法に加えて、摘出後に周囲組織に対しての局所療法は様々な形態が開発されて、現在もなお治験されております。その中で、平成25年4月よりカルムスチン徐放剤(ギリアデル)が保険診療の中で使用できるようになりました。
抗腫瘍薬剤が含まれている円盤状のポリマーを脳腫瘍摘出腔に敷きつめることで、その後徐々に染み出した薬剤により残存腫瘍を局所的に制御するものです。当院でもいち早く導入し現在使用しております。

悪性神経膠腫(グリオーマ)に対する最新の免疫療法
 私たちの行っている免疫療法は、患者さんの体内にある樹状細胞という特殊な免疫担当細胞と患者さん自身の腫瘍(グリオーマ)細胞との融合細胞を用いるオーダーメード治療で、慈恵医大独自に開発した方法です。この免疫療法では、グリオーマ細胞の抗原情報を丸ごと樹状細胞に取り込ませるため、既に確認されている腫瘍特異抗原は勿論のことながら、未知の腫瘍抗原に対しても免疫反応を誘導することができます。なお、実験動物を使った基礎実験や第T・U相臨床試験では、体内に戻された融合細胞は増殖したり、体に害を及ぼしたりすることはありませんでした。悪性神経膠腫の中で最も悪性度の高い膠芽腫の無増悪生存期間中央値は、通常の治療(テモゾロミド+放射線療法)で約6カ月程度と言われていますが、この免疫療法を併用した患者さんの場合では21カ月まで延長させることができ、その効果が実証されています。更に、最新の融合細胞免疫療法では、グリオーマ細胞だけでなく、グリオーマ細胞の元になるグリオーマ幹細胞も一緒に融合させています。この最新の免疫療法は、従来の治療法では殺せなかったグリオーマ幹細胞を標的にした免疫反応を誘導することが可能になるため、更なる臨床効果が期待されます。 なお、この免疫療法には、以下のような条件・特徴があります。
1) 臨床研究であるため、被験者としての登録条件を満たす必要があります。
2) 腫瘍摘出術、生検術などにより組織学的に悪性神経膠腫と証明される必要があります。
3) 通常の悪性神経膠腫に対する治療(放射線療法や化学療法)との併用が可能です。
4) 融合細胞を皮下投与(月1回の投与、投与回数は3〜10回程度)する外来治療です。
5) 自己の腫瘍細胞が、培養ないしは凍結保存されている必要があります。
6) 免疫力を必要とするため、病状の進みすぎていない患者さんを対象としています。



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