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各疾患について
脊髄・脊椎疾患
脊椎・脊髄疾患の病気
 
脊髄空洞症
■病因・病態

脊髄空洞症とは脊髄の中に水が溜まり、脊髄が「ちくわ」のような形になってしまう病気です。この病気の多くは、後頭部の奥にある小脳が生まれつき脊髄の方へ下に落ち込んでいる(キアリー奇形といいます)ことが原因で起こります。他には脊髄損傷や、脳脊髄の癒着を起こすような病気でも起こることがわかっています。いずれも、脳と脊髄を循環している脳脊髄液と呼ばれる液体の流れが滞ることにより空洞ができると考えられています。脊髄は脳の命令を全身に伝える神経線維の束ですから、この部分に空洞ができると感覚障害や運動麻痺が現れてきます。発症年齢は30歳代が最も多くなっています。

■症状

脊髄空洞症では、まず片手の痛みや温度に対する感覚が鈍くなり、やがて両手の力が入らなくなります。症状の進行はゆっくりですが、治療せずに放置した場合、約半数の人は20年以内に下肢にも麻痺が及び、車椅子が必要になるといわれています。また、キアリー奇形によって起こる症状は力んだときに起こる頭痛が多く、めまい、ふらつきの精査で見つかることも少なくありません。

■診断・検査

頚椎をMRI検査することにより、ほぼ診断を確定することができます。
ただし、「脊髄腫瘍」の合併症として発生した脊髄空洞症については、造影剤を用いたMRI検査が必要となります。

■手術・治療

現在のところ治療法は手術しかありません。手術法は空洞が発生している原因に合わせて選択しますが、手術の目標は空洞を縮小させることです。
手術方法としては、主に次の2種類があります。

<大孔減圧術>
頭蓋から脊柱管に移行する部分を大孔と呼びますが、この空間を拡げることによって、髄液の流れを良くするものです。これは、本来頭蓋内に収まっているはずの小脳の一部が大孔を経て脊柱管内に下垂している「キアリー奇形」により、脳脊髄症液の交通が妨げられ空洞が形成されている場合に有効な手術です。多くの場合、術後1ヶ月ほどで空洞を縮小させることができます。

<空洞短絡術>
脊髄空洞内に直接細いチューブ(カテーテル)を挿入し、空洞内にたまった水を他の場所に流すようにする手術です。「空洞−くも膜下腔シャント(SS shunt)」(空洞の水をカテーテルを通じてくも膜下腔に流す)が一般に行われています。空洞から、腹腔部、胸腔部に流す処置を取る場合もあります。
この手術は、比較的簡単で有効です。しかし、人工のチューブを用いるため、チューブがつまったり抜け落ちたりする危険性があります。また、そもそも原因となっている疾患(キアリー奇形など)の治療が行われないという欠点があります。

■症例数、治療成績
当院では豊富な経験をもとに的確な診断、適切な手術を行うことにより、重篤な合併症なく大部分の例で目標を達成し、症状の増悪は阻止できています。これまで600例以上の治療を行ってきましたが、過去5年間の症例数と合併症について下に提示します。当院で手術を受けた患者さんの9割以上の方は1回の手術で空洞の縮小が得られておりますが、15歳以下の小児例については、成人例に比較して少し高い再発率になります。今後は小児例の治療成績の向上と空洞が縮小した後においても残存する症状を少しでも軽減させるのが課題と考えています。

  5年間 2012 2011 2010 2009 2008
キアリ奇形 251 63 50 43 50 45
脳底部くも膜炎 11 4 0 2 1 4
脊髄くも膜炎 19 1 6 5 3 4
外傷性 24 4 8 4 3 5
特発性 2 0 0 2 0 0
その他 4 1 1 2 0 0
311 73 65 58 57 58
合併症 9 1 2 3 2 1
  2.90%          
変形性頚椎症あるいは頚部脊椎症
■病因・病態

頚椎の椎間板が老化によって磨り減ってしまい、クッションとしての役割を果たさなくなると、骨同士が直接ぶつかり合います。この結果、骨にトゲ(骨棘:こつきょくと言います)が出てきます。また、背骨の中(脊柱管)のテープである「靭帯」も厚くなってきます。すると、脊柱管つまり脊髄・神経の入れ物のスペースが狭くなってくるため、脊髄や神経が圧迫されることがあります。つまり、単純に椎間板の老化が引き起こす首の痛みや凝り(肩こり)だけに止まらず、神経までが侵されることがあるわけです。その状態を総称して「変形性頚椎症」あるいは「頸部脊椎症」などと呼んでいます。

右に変形性頚椎症の方のMRIを示します。
首を横から見たもの。左がのど側、右が首の後ろ側で、上が頭です。 四角い骨が脊椎の「椎体」と呼ばれる部分です。その間にある、黒く映った凸レンズのものが椎間板(下の矢印)と言う軟骨です。
軟骨が磨り減っていて、後ろの方向へ骨(椎体)からの出っ張り・骨の棘のようなもの(骨棘といいます)が出できて、後ろにあるグレーの部分の脳みその続きの脊髄(上の矢印)を圧迫しています。
脳と脊髄の周りは髄液という水が循環しているので白く見えています。
脊髄の前後にも本来は十分に水のスペースがあるはずですが、首の真ん中辺りで、脊髄が前後から圧迫を受けて、水のスペースがなくなっています。
さらによく観察すると、グレーに見える脊髄内も白くなっています。これは、脊髄に傷がついている状態を示しています。
■症状
症状は大きく分けて3つになります。
  1. 頚椎のガタガタからくる、首の痛み、肩の凝りなどが一般的です。これを軸症と呼んでいます。
  2. 頚椎の間からでる神経が、骨棘やでっぱった軟骨(椎間板)で圧迫されて、痺れや痛み、あるいは腕が上がらない・・などの症状を出すことがあります。これを神経根症と呼びます。
  3. 頚椎の中にある脊髄が骨棘や軟骨などで圧迫を受けて(上の図の状態)、手足への命令がうまく伝わらなくなったり、手足からの情報が脳へ伝わらなくなり、手足が動かなくなったり、しびれたりする上体で、これを脊髄症と呼んでいます。
■診断・検査
これまでレントゲンでガタガタが見られるので、診断されることが多かったです。しかし、これでは、軟骨の状態や中の脊髄の状態などはまったく判りません。特に、上記の症状のうち、少しでも神経にかかわるような症状、つまりシビレや動きの悪さなどを自覚するようなら、主治医に訴えて、MRIをとることをお勧めします。
■手術・治療

基本的に、誰でも、老化によってある程度発生する症状です。つまり必要以上に病気であると考えないほうがいいと思います。
椎間板ヘルニアのように比較的軟らかい軟骨が出ているわけではないので、また、首は動かすわけですから、大きな改善は望めないように思うかもしれません。しかし、特に手の痺れのみのような神経根症の場合などは、時間(半年位かもしれません)とともに自然に解決することも多くなっています。

医者には患者さんの痛みを理解はしても、実際に見えているわけではありません。ともかくご自分で痛みの起きる首の位置などを避けることが一番です。夜寝るときなど、枕を工夫するのも手です。軟らかい枕を2つくらいいろいろ組み合わせて、そのときの状態で変える(首の下に入れたり、頭の下に入れたり、横を向くときは高くしたり)と、痛みが軽減されることがあります。

首の周りの筋肉の緊張を取るために、暖めたり、超音波やレーザーを当てたりすることも行われています。古くから、「牽引療法」も良く行われています。民間療法として、針灸、マッサージ、その他、なかば新興宗教に近いようなものまで種々の治療法があります。しかし、痛みが取れない治療法をいつまでも続けるのは時間とお金の無駄であることをよく認識してください。なお、カラーの装着は長くても2ヶ月くらいでしょう。

ともかく、レントゲンだけで、「首が変形しているから…」と言うようなことで、あるいは「外から見て骨が曲がっているから・・」などということで、漫然と治療をするようなことは避けるべきです。しっかりと診断して見通しを立てることが一番です。

特に、手足の動きの問題があるようですと脊髄症状の可能性が高いですから、早く専門家に今後の見通しを立ててもらうべきです。しびれも手足に来ている場合などは、やはり同様に脊髄が障害されている可能性が高いでしょう。

見通しは、患者さん個人によって異なると思います。しかし、今後数年の間に、脊髄の圧迫により手足の動きが悪くなって、歩けなくなってしまう確率がある程度(たとえば20-30%)あるなら、その事態は避けたいわけですから、更なる手段を探すことも当然と思います。

医学的に言えば、物理的に圧迫があるわけですから、薬などで骨の出っ張りを溶かすことは出来ないわけです。ですので、抜本的な治療を薬などに求めることは出来ません。 端的に言えば、「大工仕事」でしか現状を脱却できない・つまり、手術と言うものを視野に入れる必要があります。

頚椎椎間板ヘルニア
■病因・病態

頚椎の椎間板が加齢とともに変性していく過程において、ゼラチン状の組織(髄核)を覆っている厚い袋(線維輪)の一部が膨れたり、その袋(線維輪)が破れて中身のゼラチン(髄核)が飛び出してしまったことを、医学用語で「椎間板ヘルニア」と呼びます。
誰でも年齢とともに、椎間板が多少はつぶれて膨れます。したがって、どこから「椎間板ヘルニア」と呼ぶ病気として診断を下すかは医者の判断になります。

椎間板ヘルニアのMRIをご覧ください。
首を横から見たところです。左が前方で、のどの部分です。右が首の後ろです。
四角い部分が頚椎の前の部分の骨で椎体と呼ばれます。その間にあるのが軟骨で出来た椎間板です。 上から数えて、5番目と6番目の間の椎間板が後ろのほうへ飛び出しています。このため、脳から伸びてきている脊髄が、圧迫を受けていることがおかかりでしょうか。
■症状

椎間板が飛び出したことで、首の後ろの部分や肩甲骨(貝殻骨)の内側が痛くなったりします。また、椎間板が特に後ろに飛び出せば、脊柱管の中に入っている脊髄や手に行く神経に当たり、その結果として手の神経痛や痺れを生じます。また、脊髄を圧迫すれば、脳からの命令がうまく伝わらなくなるため、手先が動かなくなったり、足がうまく運べなくなったり(特に階段のくだりなど)することになります。

■診断・検査

MRIによる検査が必須です。

■手術・治療

比較的軟らかい軟骨である椎間板は時間とともに吸収されていきます。
したがって、多くの場合腰椎の椎間板ヘルニアと同じように時間とともに症状が消えます。
ただ、症状を軽減するために痛み止めなどのお薬を使ったり、首を動かさないほうが楽でしょうから、首のカラー(コルセット)などをします。首の周りの筋肉の緊張を取るために、暖めたり、超音波やレーザーを当てたりすることも行われています。古くから「牽引療法」も良く行われています。
しかし、これらの治療は、カラーを除いて、あくまでも患者さんの痛みとの兼ね合いだけです。痛みが取れない治療法をいつまでも続けるのは時間とお金の無駄であることをよく認識してください。患者さんに治療を選ぶ権利があります。
カラーもいつまでもするのは好ましくありません。今後長い間にわたって頭を支える助けとなる首の周りの筋肉が萎縮してしまうからです。長くて2ヶ月くらいでしょう。

上記のような治療を行ってもいつまでも手などが痛い方、あるいは、脊髄の圧迫が強くて、手足の麻痺が出ている方などは、時間がたつと機能的に回復が期待できないので、出っ張っている椎間板を取り除くなどの手術を考えることになります。

頚椎後縦靭帯骨化症

頚椎の椎間板が年齢とともに変性することは述べましたが、それとともにですが、特に脊柱管(脊髄を入れているスペース)の前方にある、脊柱の連続性を補助する靭帯である後縦靭帯(こうじゅうじんたい)に骨のような組織が増殖してくる不思議な病気で、アジア特に日本で多い病気です。

印象が悪いのですが、その特殊性から「難病」に指定されております。 手術の際には、地元の保健所へ尋ねると、医師記入用の書類をくれますので、主治医に記入してもらい提出すると、治療費の補助金が下りる可能性があります。

具体的なイメージのCTscanを提示します。
CTscanは骨の断層撮影です。首の頚椎を水平に輪切りにした状態です。中のおむすびの逆さにしたような部分が脊柱管という脊髄を入れるスペースです。そのいれものの前方部分に矢印の「きのこ」のような白いでっぱりがあります。これが靭帯の骨化の部分です。


正常な頚椎の横断面

後靭帯骨化症の横断面
■症状は・・

脊柱管の前の部分の靭帯に骨が出来てきてしまえば、スペースは狭くなる一方です。急に狭くなることもないですし、永遠に骨が出来続けるわけではないのですが、徐々に大きくなってきて、中に入っている脊髄を圧迫してしまうことがあります。すると、脊髄が傷つくことにより、手足の動きが悪くなったり、手足の痺れなどが出てくることになります。

この症状の進行は、通常は何年と言う単位です。しかし、転んでしまったり、事故などの外傷により急に悪くなることがあります。半数の方はそのようなアクシデントを機会に動きが悪くなり入院していると言われています。

■どうなるの?? どのような治療法があるの??

頸椎のガタガタから来ているものではありませんので、特殊な治療法はありません。古典的な牽引療法などが効く可能性は理論上はほとんどありません。ともかくMRIという痛くない検査で病状の評価を専門家にしっかりしてもらうことが一番大切だと思います。したがって、脊髄の圧迫による症状が出始めたときに、今後さらに進行する確率がどの程度あるのかを専門医に相談するのが良いと思います。

症状と脊髄の圧迫の程度は必ずしも比例しません。症状が進むようなとき、症状がまだ軽くても圧迫が強いときなどは、手術療法を考えても良いかもしれません。なにしろ、骨を溶かす薬などを使うことなど出来ないので、本質的な治療は手術以外にありません。

腰椎椎間板ヘルニア
■椎間板ヘルニアとは?

腰椎の間にあり、隣り合った腰椎の主たる連結組織であり、クッションであるのが軟骨で出来た椎間板です。イメージ的にはアイスノン®の袋の分厚いものを想像してもらえばいいと思います。周りの袋の厚い部分を「繊維輪」とよび、中の柔らかい部分を「髄核」と呼びます。髄核はゼラチンのようなもので出来ています。

この椎間板は先に述べたとおり、誰でも年齢とともに水分が失われてきて、ガタガタして、つぶれ来てしまうのです(だから、年齢がすすむと、身長が低くなるのです)。そのような変性してゆく過程の中で、だれでも大なり小なり、椎間板全体としてはつぶれて周囲に出っ張ってくるわけですが、特に、髄核が繊維輪を破って外へ飛び出してしまったり、繊維輪ごと膨らんで、ひどく出っ張った場合を「椎間板ヘルニア」と呼びます。

誰でもおき得ることなのですが、その程度の差は千差万別です。ちょっと出っ張った程度では、腰が重いとか、腰痛が起きてくることになります。後ろのほうへひどく繊維輪が出っ張ったり、中の髄核が飛び出し、腰椎の中の脊柱管の中を走っている足への神経を押してしまうことがあります。そうすると、その神経が腫れ上がるからでしょうか、神経痛を起こしてきます。多くの場合、この神経は背骨の外を出ると一本の坐骨神経と呼ばれる神経になりますので、坐骨神経痛と呼ばれるわけです。

■症状は?

比較的突然に、腰痛が生じ、神経にぶつかっている場合には、神経痛つまり坐骨神経痛を起こすことが多いです。この神経による痛みの部位は左右どちらかのお尻の後ろ側から太ももの裏側やふくらはぎの外側さらにひどい方は足のほうまで痛みを生じます。これは休んでいてもおきますし、動くとひどくなる方も多いです。

■診断は?

軟骨はレントゲン撮影では写りません。レントゲンでは椎間板がつぶれてきたのがわかるだけですので、その出っ張り程度はレントゲンではまったくわかりません。ですので、レントゲンだけの診断はほとんど意味がありません。軟骨の状態や、中の神経の圧迫の具合がわかるのはMRIという検査のみです。


腰椎の椎間板(矢印)が後ろ(画面右のほう)に飛び出しているのがわかりますか?

手術で実際に取れた椎間板です。
■どのようになるのでしょうか?

本来椎間板は老いてゆく一途をたどる臓器です。先にも述べたとおり、誰でも起きることです。したがって、皆さんが特殊な治療を必要とすることはないでしょうから、原則的には、大部分の方は時間が解決してくれるわけです。つまり、特殊なものではないということです。

しかし、そうはいっても、痛くてしょうがなければ、その時間はつらいものになります。従って、その間の痛みを抑えて時間を稼ぐのが一番でしょう。その時間とは、人によりまちまちですが、多くの方は、3ヶ月から6ヶ月、時として1年くらいかかる方もいらっしゃいます。

しかし、そうはいっても、痛くてしょうがなければ、その時間はつらいものになります。従って、その間の痛みを抑えて時間を稼ぐのが一番でしょう。その時間とは、人によりまちまちですが、多くの方は、3ヶ月から6ヶ月、時として1年くらいかかる方もいらっしゃいます。

■どのような治療法があるのでしょうか?

つらい時間をなくすために痛みを少なくしたいわけです。痛みのない時間を多くして、時間が解決するのを待ちたいわけです。しかし、患者さん個人個人によって事情が異なります。一日中いつも寝ていられる方は少ないでしょう。毎日肉体労働もしなくてはならない方や、そうでなくても、いつも体を動かさなくてはいけない方もいらっしゃいます。ですから、それぞれの生活に合った痛みのとり方があると思います。

病院や医院では、痛み止めなどのお薬を出すでしょう。より専門的にはペインクリニックと言って、麻酔薬などを局所の神経に近いところに打って、痛みを和らげてくれるところもあります。付随して起きてくる筋肉痛などに対しては、マッサージなども良いでしょう。針治療でもお灸でもいいでしょう。要は、自分が痛みが取れてくれるもの、自分が自分の生活の中で行きやすいもの。などが選択の基準となると思います。弱みに付け込み、「私のところへ毎日来なさい・・」などという方もいるかもしれません。それは時間とお金の無駄使いになることもあります。痛みがわかるのはご本人だけですので、自分が「痛みが取れるのはこれだ」と言うものを探すことだと思います。

繰り返すようですが、他人から強制されて、よくもならないのに、無理やり治療するところへ通うことだけは避けたほうがいいと思います。なかば、新興宗教みたいな面もあるのではと思います。

■それでも、良くならなかったら?あるいは、そんなに治療に通う時間がない方は?

以上のような、通常の治療法で自然に良くなる方が大部分ですが、中には例外の方がいらっしゃいます。あるいは、そんなに治療へ通えない、あるいは、どんなことをしても痛くてしょうがない方がいらっしゃいます。

その場合には、医学的な特殊な治療法として、レーザー治療と手術があるわけです。厳密にはそれぞれの得意なタイプの椎間板ヘルニアがあります。レーザーは一般には繊維輪が出っ張っているタイプに対して効果が得られやすいです。一方、手術では髄核が飛び出したタイプには治療成績は非常によく、繊維輪が出ているほうが幾分は不得意です。椎間板ヘルニア全体とすれば、手術のほうが得意の範囲が広いと思います。

<レーザー治療>
最近になり、一泊入院ですむような局所麻酔で行うレーザー治療は普及してきました。椎間板にもいろいろなタイプがあり、この治療によって良くなる方もいらっしゃいます。しかし、その椎間板ヘルニアの形を検討してもらってからではないと、ご自分の求める結果と一致しないことが多々ありますので、よくお聞きになってください。
これは保険診療ではありませんので自費診療となります。医療行為のすべては、担当の医師とご自分の判断との間の契約です。責任の所在をはっきりさせたほうが後のトラブルは少ないと思います。費用は20万円前後と思います。
(当院では現在行っておりません)

<手術療法>
全身麻酔で出っ張っている椎間板を取ってくる手術です。
背中の皮膚を3cm程度縦に切り、背中の筋肉をよけて、腰椎の後ろの部分を一部ドリルで削ります。
そこで、顕微鏡を使用して、脊柱管の中にある神経を入れている袋(硬膜嚢)を後ろからよけて、その前にある出っ張った椎間板を取り除きます。
手術時間は2時間はかからない場合が多いです。
この手術にて、90-95%くらいの確率で神経痛は良くなるものと思います。しかし、椎間板がつぶれたプロセスは同じですので、腰痛などはあまり変わらない可能性が半分程度あります。

手術でおきえること

  1. この手術で命にかかわることはゼロに近いです。しかし、麻酔の問題や術後の肺炎、血栓症などのほかに、椎間板を取り除くとき、椎間板があったスペースまで取り除こうとすると、椎間板の前方にある、お腹の中を走る血管を傷つけてしまい、知らないうちに大出血となり命を落としたということがおきたことが報告されています。
  2. その他の問題:これが総じて5-10%あるかと思います。
    1. 神経をよけて手術をするわけですが、その際に圧迫されている神経をかえって傷つけてしまうことがあります。すると、坐骨神経痛などが手術前よりひどくなるわけです。
    2. われわれは、基本的には外に出っ張った椎間板の髄核しか取りません。すると、残って出っ張っている繊維輪がまだやはり痛みの原因となり、もう一回手術をしなくてはいけなくなることがあります。
      これを避けるために出っ張っている繊維輪を大きく取り除きたいのですが、それをすると次の項目の「再発」にかかわるので行わないで、むしろ、神経の後ろの部分の骨をしっかり削り、神経を後ろに逃げられるようにします。
    3. 一方、繊維輪の出っ張りが強いので繊維輪を多く取り除くと、今度は、椎間板の袋の「あなぼこ」が大きくなってしまうわけですから、術後に歩いていたりすると、中に残っている髄核が外へ飛び出て来てしまうこと(再発)があり得ます。これは、繊維輪を大きく取り除かなくてもおきることがあります。
    4. 勿論、手術ですので、ばい菌がついてしまう(感染)を起こすこともあり得ます。
    5. 手術ですので、輸血はスタンバイしますが、先の血管の損傷以外輸血するようなことはありません。
    6. 神経の袋(硬膜)を傷つけてしまったときには、中に循環している髄液が漏れてしまうので、漏れをとめるために、ヒトの血液の成分から抽出したフィブリン糊を使うことがあります。

手術後は?
手術後は翌日くらいから、トイレなどへ歩いてもらいます。傷の下の筋肉痛も2,3日でよくなる方が多いです。抜糸は7日目くらいです。その後は、退院はいつでもOKとなります。


腰部脊柱管狭窄症
■腰部脊柱管狭窄症とは

年齢を重ねるごとに、腰の椎間板がガタガタすることで、椎間板が横に出っ張ってきたり、脊柱管の中の支える靭帯もガタガタの代償として厚くなってきます。すると、結果として、上の図の右側ように、骨の中のワッカである脊柱管が狭くなってきます(狭窄状態)。すると、その中の硬膜嚢のなかに入っている神経が圧迫つまり首を絞められているような状態になります。これを「脊柱管狭窄症」と呼んでいます(下の図の右側)。


硬膜嚢=神経を入れている袋

狭くなった硬膜嚢

従って、この病気は、椎間板ヘルニアより年齢が高い方に多いです。(ガタガタの長い歴史の結果生じたものですので)また、ガタガタから来るものですから、腰椎の連結がうまくいかなくなって、ずれてしまう(亜脱臼)を起こして、「すべり症」というひどい腰痛を一緒に持っている人もいます。

■症状

腰のガタガタのために、多少なりとも腰痛もあるようですが、別に述べるすべり症を一緒に持っていなければ、ひどい腰痛は少ないようです。足や膀胱へ行く神経の圧迫症状が主体ですので、歩いていると足がしびれたり、はれぼったく感じたり、力が入らなくなりして、歩けなくなることが多いです。しかし、腰を曲げて少し休んでいると、しびれも取れてまた歩けるようになります。つまり、歩いて休んでと言うことを繰り返すことになります。これを「間欠性跛行」と言います。その歩ける時間がだんだん短くなってくる方が多いです。あるいは、足に行く神経一本が圧迫され、どちらかの足やお尻あたりが痛くてしょうがなくなるということもあります。この症状は、椎間板ヘルニアのように、ある日突然急に起きることはなく、ゆっくりとおきてくることが多く、また、良くなったり悪くなったりを繰り返す方もいます。

■診断・検査

神経を圧迫しているのは、軟骨である椎間板と、柔らかい靭帯ですので、レントゲンをとってもまったく判りません。つまり、歩けなくなっているのに、レントゲン撮影だけで「腰の骨が変形している…」と言うことで、中途半端な治療を受けるのは非常に良くないです。 正確に診断するには、MRIかCTscanを撮る必要があります。

■治療・手術

物理的な圧迫により「神経が首に絞められている」いるわけですから、痛み止めやビタミン剤などの通常のお薬が効くことは稀です。唯一効果が期待できるのが、圧迫された神経の血の巡りをよくしてくれるお薬です。試してみる価値は十分にありますが、効かないのにだらだら言いなりになって飲むのも良くないでしょう。このお薬の点滴や注射もあります。しかし、これらの薬物療法は根本の原因を取り除くわけではありません。さらに、理学療法としての牽引などしてもまったくと言っていいくらい効果は期待できません。また、痛みが強い時期にはペインクリニックなどでの痛み止めのブロックもいいでしょうが、基本的にはこれとて痛み止めの薬と変わりませんので、抜本的治療でないことはご理解ください。
ただ、時間が解決してくれることもあり得ますので、可能性は追求するにこしたことはありません。しかし、物理的な変形がある以上、最終的には「手術」を視野に入れなくてはいけなくなることも稀ではありません。

腰椎すべり症
■病因・病態

この病気は、腰の骨同士の重要な連結組織である椎間板が、誰にでも起きる「変性」というプロセスの範疇を超えてしまって、腰椎同士の連結がグラグラになっている状態です。つまり、腰椎がいつも少し脱臼(亜脱臼)を起こしてしまっている状態です。 上の図の左側が正常の腰椎を横からみたところですが、右側の上から2番目の腰椎が前のほうにずれているのがお分かりでしょうか?

グラグラがあるものですから、腰部脊柱管狭窄症も合併しやすいですが、特にホルモンの関係により、50歳あたりの女性にこの症状が起きることが多くなっています。
若い方の場合には、小さい頃にサッカー、野球、テニスなどのスポーツの経験者でおきやすいのですが、小児期に腰椎の一部にひびが入り、「腰椎分離症」という状態となってしまい、その構造上の弱いところが長年に渡って影響を受け、すべり症を発症することがあります。

■症状

腰椎の脱臼を慢性的に起こしているわけですから、肩の関節の脱臼と同じように「痛み」つまり腰痛が高度に生じることが多いです。これは、休むことによって多少良くなる方もいらっしゃいますが、立っていたり、歩いたりすると悪化する場合が多いようです。すべり症と合併しやすい脊柱管狭窄症を併発すると、足や膀胱へ行く神経の圧迫症状が生じ、足のしびれとか力が入らないなどの症状もでます。

■診断・検査

レントゲンを詳細に撮ることにより、診断は出来ます。
しかし、椎間板の状態や中の神経の状態を把握する必要がありますので、MRIとCTscanは必須です。

■手術・治療

腰椎の脱臼という物理的な現象ですので、物理的な治療法が必要となります。ひとつは、「外から、腰椎を固めてしまう」という考え方で、コルセットをはめることも可能です。しかし、これを一生装着したままというわけにはいかないので、「筋肉のコルセットをつける」という考え方がより有効です。具体的には腹筋、背筋を鍛えることをしなくてはなりません。これはベッドの上で行うものより、水中でウォーキングや水泳が一番良いと思います。なにより、椎間板に圧力がかからないで(水の浮力が働きますから)筋トレができますし、体重のコントロールにもなります。また、中年からの高血圧や糖尿病などの「生活習慣病」の予防にもなります。

筋肉のコルセットが効くようになるまでの間は、対症療法(痛みの軽減)として、各種の痛み止めやペインクリニックでのブロックなどを併用することもあります。種々の民間療法もありますが、他人から無理やり背骨を動かされるような治療(骨の配列矯正とか、変な方向への牽引療法など)はお避けになったほうが良いと思います。 しかし、物理的な変形がある以上、最終的には手術というものを視野に入れなくてはいけなくなることも多いです。

手術は全身麻酔で行いますが、多く場合、腰の後ろの皮膚を10cmくらい切って手術を行います。まず、腰椎の後ろの部分を削り、なかに入っている神経を入れた硬膜嚢の圧迫を解除します。

次に、硬膜嚢をよけながら、前方にある椎間板を取り除き、その代わりに椎間板のスペースに金属でできた「ケージ」と呼ばれるものを挿入して、椎間板がこれ以上動かなくなるようにします。

さらに、それだけでは固定が不十分の可能性もありますので、患者さんの状態に合わせて、種々のスクリューや金属板のようなもので、固定を補強します。 手術時間は、患者さんの手術部位の状態によって異なりますが、通常6時間くらいです。

なお、上記の補強材料は、アメリカのFDA(食品医薬品局)の指導では「異物」とされていますので、脱臼を起こしている椎間板が固定されたのが確認できた段階(半年後以上)に、再び取り除く手術を必要とします。

手術の危険性は?
手術そのもので命にかかわることはありません。麻酔という問題があるのみです。
その他で起きえることは以下の事柄です。この手術は金属なども使用するために、手術の合併症の確率やはり高くなります。全国的にも、また、我々の施設でも10-15%程度になんらかの合併症を経験しています。

骨を削っているときや、靭帯を切除しているときに、また、ケージを挿入したり、スクリューをねじ込むときなどに神経を傷つける、あるいは切ってしまうということが起こりえます。
神経は膜に包まれていてその中に髄液という水が循環しています。手術に際して神経は切りませんが、膜を傷つけ、髄系がもれることがあります。それが皮膚の下まで来て、ばい菌が入ってしまうことがあり得ます。髄液漏と呼びます。
金属は異物ですので、アレルギーやそれを核としてばい菌がついてしまう感染症を起こすことがあります(3-5%と言われています)。
この手術では時折、出血が多くなり、輸血を必要とすることがあります。ご自身の血液や日赤の保存血をスタンバイして、いざというときに使用しますが、エイズ、肝炎のウイルスなどの混入はほとんどないとのことです。また、先の髄液漏が出来た場合は、ヒトの血液から成分だけ抽出した「フィブリン糊」を使うことがあります。
この手術では大きめの金属を入れるので、傷の痛み、筋肉の痛み、などのほかに、「腰が重くなる」ということは、ほぼ避けられないことのようです。

手術後は?
傷の痛みは3日目くらいがピークの方が多いです。
コルセットをつけながらですが、徐々にベッドから離れられるように、主治医たちがプランニングをしてくれることになります。
傷が綺麗になり、高度の合併症のない限り、7−10日後くらいには退院することが可能となります。

脊椎・脊髄腫瘍
■腫瘍とは

腫瘍とは、本来の体の中の細胞が勝手に自分のサイクルを無視して増え続けて、どんどん大きくなるものを言います。
その中で、一個一個の細胞の性格が悪くて、肺とか肝臓などのほかの臓器にまで繁殖(転移と言いいます)するものを癌と呼びます。しかし、他の多くのものは勝手に細胞が増殖するわけですが、そのように暴れることは少ないのです。
そんな「腫瘍」が背骨や神経組織のご本尊である脊髄に出来てしまうことを脊椎・脊髄腫瘍といいます。

A.脊椎腫瘍

脊椎とは背骨のことですから、骨に出来る腫瘍のことを指すわけです。
勝手に脊椎から出来る腫瘍(脊椎腫瘍)と他の臓器の癌などの転移による腫瘍(転移性脊椎腫瘍)があります。

  1. 原発性脊椎腫瘍
    体のほかの部分にも出来る骨の腫瘍はやはり背骨に出来るわけですが、種類は比較的限られています。
    細胞の「つら」からすると、癌のように悪性の腫瘍は少ないです。しかし、体を支える脊椎に腫瘍が出来てしまえば、背中が痛くて歩けない、その他の症状がでてきて困ることになります。腫瘍は取ればよいだけでなく、背骨としても機能を再建しなくてはなりません。かなり専門的な治療が必要となってくると思います。
  2. 転移性脊椎腫瘍
    背骨(脊椎)腫瘍は、確率からすると他の臓器(肺癌)などの癌組織の転移が多いです。
    簡単に考えると、転移して背骨が壊れてしまい痛くなったら、それは「あきらめるしかない」と言う感覚かもしれません。でも、終末期医療を考えると、痛みを我慢する必要は「これまで病気と戦ってきた方々たち」に必要はないと思います。まして、腫瘍が大きくなり、脊椎の中の脊髄にまで圧迫が加わると手足が動かなくなり、人間的な生活が送れなくなりこともおきえます。
    従って、適切な治療により、痛みも少なく、手足がちゃんと動いて質の良い生活を送ることが出来ますので、自分の人生観を担当医師とよく相談されることをお勧めします。
B.脊髄腫瘍

脊椎の中の脊髄や脊髄の周りの膜や神経から出来た腫瘍を指します。
脊髄腫瘍にも種々のものがありますが、細胞の性質からすると、癌のような悪性のものは少ないです。しかし、脊柱管という限られたスペースに脊髄は割りときっちり入っているので、余分な腫瘍が出来てしまえば、早晩脊髄を圧迫して、手足の痛みや痺れ、麻痺などを生じてきます。そして、徐々にですが確実に症状は進むということになるわけです。

治療法の選択としては、癌みたいなものではないので、現在の医療レベルでは、薬や放射線療法で治すことは無理であり、手術に頼らざるを得ません。

腫瘍の局在としては、軟らかくて複雑な組織である脊髄の中から出てきた腫瘍(髄内腫瘍)とその外側から出てきたもの(髄外腫瘍)とは、手術の難易度がまったく異なります。 技術的なことの予測は、MRIやCTscanという検査などを行い総合的に判断することになります。

左の図の白く丸いものが腫瘍です。灰色の脊髄を押していることがわかると思います。
一般に脊髄の外から出来てきた腫瘍(髄外腫瘍)は、専門的な施設であれば比較的安全に手術が行えます。しかし、脊髄内の腫瘍(髄内腫瘍)では脊髄を切開して腫瘍を取らなくてはならないので、脊髄を傷つけてしまう可能性が高く、より専門的な施設でいろいろお話を聞くことをお勧めします。



手術療法

脊髄腫瘍の手術は全身麻酔で行いますが、基本的には手術そのもので命にかかわることはありません。
しかし、首や背中の皮膚と筋肉を切るわけですので、術後の傷や筋肉痛は当然生じます。
脊椎は、切開して、再び戻してきますので、安心してください。
その他の起きえることは、脊髄の周りを循環している髄液という水分が脊髄を包む膜(硬膜)の縫い目などから漏れてきてしまうことがあり、いつまでも続く場合は再手術もあり得ます。
それに係わり、ばい菌が入ってしまう(感染)も起こりえます。
手術時間は腫瘍のタイプ、摘出範囲で異なります。

脊髄腫瘍のタイプにより、腫瘍の摘出に関しての問題が異なりますので、別々に述べます。

髄内腫瘍 細胞の形から主に三種類が考えられます。
  1. 脳室上衣腫
    (ア) 手術的に取れば、再発は少なくすみます。反面、放射線療法などは効果が少なく、手術が主な治療法となります。
    (イ)半面、手術でしっかり取らなくてはいけないので、摘出に際して、周囲の脊髄への障害が必発です。つまり、一時的には手術により、手足の麻痺や痺れなどが悪化する可能性が高いです。
    (ウ)摘出に際して、脊髄の後方部分は絶対に切開しますので、その部分の脊髄の障害は必発であります。これにより、深部感覚といって、足の裏が大地についている感覚がなくなり、雲の上に立っているような感じになると表現される患者さんが多いです。また、足の指などが曲げる方向などがわかりにくくなります。
    (エ)この麻痺などは、リハビリテーションなどにより、徐々に回復する可能性があります。その期待できる期間は2-3年間はあると思います。
  2. 星細胞腫
    (ア) 手術的にすべてを取ることは困難を極めますので、細胞の形を確認する程度に摘出をとどめる場合が多いです。
    (イ)残された腫瘍に関しては、放射線療法や化学療法と言ってお薬を使用することになります。
    (ウ)手術により、脊髄の症状の圧迫はないようにしたいのですが、やはり、腫瘍により腫れている脊髄を触りますので、術後に悪化はあり得ます。
    (エ)この麻痺などに関しては、リハビリテーションが必要となると思います。
  3. 血管芽腫
    (ア) この腫瘍も手術的に取らなくては他に治療手段はありません。
    (イ) 摘出に際しては、やはり、50%以上の確率で一時的には脊髄の症状が悪化すると思います。
    (ウ) しかし、長い目で見れば、神経症状の多くは術前と同じくらいにはなる方が多いです。そのためには術後のリハビリテーションも大切です。
    (エ) しっかりと摘出すれば、再発の心配はありません。
髄外腫瘍 細胞の形から二種類が考えられます。
  1. 神経鞘腫(上の写真のものです)
    (ア)脊髄から出る神経(脊髄神経)の周りの膜(神経鞘)から発生した良性腫瘍です。ゆっくりと発育します。
    (イ)手術的に摘出する際には、やはり、圧迫されていた脊髄を触らなくてはならないので、術後に一時的に脊髄の症状(手足の麻痺や痺れなど)が悪化する可能性が10-20%はあります。
    (ウ)脊髄神経から出てきた腫瘍ですので、その神経そのものは切らなくてはなりません。するとその神経の機能は脱落するのは必発なわけです。手足のある部分の感覚がおかしくなり、痺れが出たり、ひどい場合はある筋肉の麻痺を生じます。この発生の確率は20-50%位といわれています。
    (エ)この麻痺に関しては、徐々にその程度が軽快してゆくことが多いです。リハビリテーションは大切になります。
    (オ)しっかりと摘出されれば、再発の可能性は少ないです。
  2. 髄膜腫
    (ア)脊髄の周りの膜(髄膜あるいは硬膜)より発生した腫瘍で、良性のものです。
    (イ)手術的に摘出する際には、やはり、圧迫されていた脊髄を触らなくてはならないので、術後に一時的に脊髄の症状(手足の麻痺や痺れなど)が悪化する可能性が10-20%はあります
    (ウ)麻痺は改善する可能性が高いですが、リハビリテーションが大切です。
脊髄血管奇形
■病因・病態

血管障害とは、脊髄を栄養している血管(動脈とか静脈)が詰まってしまったり、切れてしまったり、あるいは、血管そのものの奇形などのことを指します。
血管が詰まったり切れたりするのは、脳で同じことが起きると脳卒中(脳梗塞、脳血栓、脳出血、くも膜下出血)と呼ばれとても多い病気です。しかし、同じ脳の延長の中枢神経である脊髄では、いわゆる脳卒中と同様の事態が起きることは、とても少なくなっています。

脊髄で出血したり、問題を起こす血管障害の原因の多くは、血管奇形です。
血管奇形とは、本来の血管の構造を生まれもって持っていないものです。本来の血管は心臓からでて「動脈」となり、それぞれの組織へ血液を回すために「毛細血管」、そして、酸素が少なくなった血液を心臓と肺へ戻すために「静脈」へという「形」の変化があります。ところが、この毛細血管がなく、異常な血管を通じて、直接「動脈」から「静脈」へ血液が流れてしまう状況が「血管奇形」と言われています。こうした異常な血管が脊髄内にあり、その構造上の欠陥から出血を起こしたり、周囲の正常な脊髄の血液の流れを奪ったり、流れを悪くしたりすることにより、脊髄の機能障害を起こします。

■症状

脊髄血管障害が引き起こす具体的な症状としては、手足の動きが悪くなったり、感覚が鈍くなるなどがあります。
奇形とは言うものの、症状を出すのは、決して子供たちではなく、むしろ成人に多く発症します。あるいは、年単位で徐々に脚の動きが悪くなるなど、ゆっくりと症状が進むことが多いです。

■診断・検査
診断は、MRIにて専門医ならばある程度診断できますが(下の写真の矢印)、正確な診断は血管撮影と呼ばれる、足の付け根から細いチューブ(カテーテル)を入れて、脊髄へ行く血管を写す検査が必須となります。
■手術・治療

治療は、カテーテル検査を応用して、異常な血管を処置する血管内手術と全身麻酔で直接手術的に血管の奇形の処置をしたり、出血した内容物を取り出すことが行われます。
なにしろ、大学病院クラスの大きなところでも、そんなに頻回に出会うことはありません。
私どもの施設でも、年に1から4名くらいの患者さんを扱うのみです。
こればかりは、本当の専門施設での治療をお勧めします。



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