神経外傷・スポーツ頭部外傷
脳の表面を走行する動脈や架橋静脈、脳そのものから出血し、硬膜と脳の間のスペースに血腫が溜まったものです。頭部CTでは三日月状の血腫となり、脳の圧迫が強い場合には緊急手術が必要となります。
急性硬膜下血腫には脳の損傷を伴う場合と伴わない場合があります。脳の損傷を伴わず血腫が多くない場合は、脳への圧迫も軽度で予後が良いことも多いですが、血腫が多い場合や脳の損傷を伴う場合には予後が悪く、生命に危険が及ぶ可能性が高いです。手術によって救命ができても麻痺や意識障害などの後遺症が残ることもあります。また症状が頭痛や嘔気だけのことなどもあり、脳振盪と判断されて様子を見ていたが、実は急性硬膜下血腫を呈していたという場合もあります。スポーツなどで頭に外力が加わった場合、その後に頭痛や嘔気、意識状態の変化などがないかを慎重に観察し、急性硬膜下血腫の可能性に注意する必要があります。
血腫による脳の圧迫が強い場合や、血腫が増加する場合は開頭血腫除去術を行います。開頭して硬膜を切開し、脳を圧迫する血腫を除去して止血を行います。脳そのものの損傷がない場合は、早急に脳の圧迫を解除することで良好な予後を得ることができますが、脳の損傷を伴う場合には血腫を除去しても脳が急激に腫脹し、その後も生命に危険が及ぶ場合があります。そのような場合には開頭した骨を外したままにして可能な限り脳の圧を逃がすようにしたり、術後しばらく全身麻酔をかけたままにして脳の代謝を抑えたりすることもあります。治療によって救命できたとしても、意識障害などの重篤な後遺症が残ってしまうこともあります。