脊椎脊髄疾患
脊椎圧迫骨折は、主に転倒や転落によって脊椎に上下方向の力が加わり発症します。高齢化が進む日本では、骨粗鬆症を背景に持つ方が尻もちをつくなどだけの軽微な外傷によって引き起こされる骨粗鬆症性圧迫骨折が増えています。脊椎圧迫骨折の診断は、まずいつから、どのような状況で、どんな痛みが出現したのかなどの病歴をお聞きし、お体のどこが痛いのか、痛み以外に神経の障害を生じていないかなどを診察します。そしてレントゲンやCT、MRIなどの画像検査を行い診断をします。
骨折を生じると少しの体の動きでも腰や背中に痛みを感じ生活が著しく制限されてしまいます。治療が順調にいけば、数ヶ月で骨折が癒合して痛みも軽減しますが、圧迫骨折の治療が上手く行かないと、いつまで経っても骨癒合が得られない偽関節となり、体を動かすたびに骨が動いて、重い痛みやしびれが生じるケースがあります。ひどい場合には、神経麻痺を生じ、寝たきりの原因となってしまう可能性のある、圧迫骨折の重篤な後遺症の一つです。
圧迫骨折では、まずはコルセットを着用して腰部を固定し、安静を保ち、日常生活での姿勢を矯正する保存的加療を行います。安静にすることで、3~4週ほどでほとんどが治りますが、疼痛が改善されない症例や疼痛が強く体動困難をきたしている症例では、手術も検討され、経皮的椎体形成術(BKP)という脊椎圧迫骨折によってつぶれた椎体を骨折前の形に戻し、安定させて痛みを軽減する手術を行なっています。
BKPでは、全身麻酔下に背中に約5mmの切開を2か所入れ、潰れた椎体の中に風船状の手術器具を挿入します。風船を膨らませることで椎体を持ち上げ、骨折前の形に戻します。その後、風船を抜き、できた空間に骨セメントを注入して椎体を安定させます。
また当院では比較的新しい治療法である骨粗鬆症性骨折体ステント留置術(VBS)も行なっております。VBSは、骨折した骨にステントを入れてからセメントを詰める手術で、ステントで固定した内側にセメントを詰めるため、均一に詰めることができ、外側に漏れにくいというメリットがあります。
脊椎圧迫骨折の治療では、原則として手術の翌日よりコルセットを装着し、起立・歩行を開始します。